とらやぎです。お金の本、5冊目。
著者:出口治明
タイトル:働く君に伝えたい「お金」の教養 ~20代の新しいお金づきあい入門~
著者は、ライフネット生命の代表取締役会長兼CEO。企画部、財務企画部で経営企画を担当するとともに、生命保険協会の初代財務企画専門委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事する。
この本は、著者が「社会に出て10年経つか立たないかくらいの若者に向けた『お金の教科書』をつくりたい」と思ったのがきっかけで書かれた本だそうです。
学んだこと
バブルおじさん
特に「なるほど!」と感じたのは、今の時代は「バブルおじさん」が国を牛耳っているという部分です。バブル期を20代~30代に経験したおじさんが、「保険」「貯蓄」「マイホーム」「結婚式」「専業主婦」「定年退職」などの過去の常識を、「当たり前の伝統」のような顔をして若者を縛っていると。
社会背景と一緒に考え方が違う理由を説明してくれているので、納得できる内容でしたし、考え方が違うのも無理はないのかもと思わされました。
本書は、日本が戦後に経験してきた経済成長の過去の背景と、少子高齢化の進む今後の日本の状況を予測した上で、賢いお金の使い方を教えてくれています。以下に内容をメモしておき、復習に使いたいと思います。
お金に対する不安の正体を知る
- メディアは意図的に「お金の不安」を煽っている
- なぜなら、それで「儲かる」人がいるから(健康食品や進学塾など様々)
日本の借金の正体
- 日本はだいたい55兆円の税収に対して100兆円くらい使っている
- 足りない分は「国債」という借金をしていて多くを銀行に借りている
- もし日本が借金を返せなくなったら、お金を貸している銀行も破綻する
- 銀行が破綻すれば、私達が銀行に預けているお金も紙くずになる
年金制度の不公平をなくすための2つの方法
不公平をなくすための方法は下記2つ。どちらの案も提示せず「不公平感」を煽るメディアや学者がいれば、それはただプラカードを掲げてやいのやいのと言っているだけ。
- 働き手を増やす(移民を大量に受け入れる、子を大量に産ませる)
- 高齢者を減らす(延命治療を避けるなど)
どちらも採用せず不安を煽るのではなく、「どうすればよりマシな人生を送れるか」を考える方が建設的。また「損をしている」と不安になって悩むのももったいない
年金に対する本書の回答
- 50年後、年金制度は機能しているか→政府が破綻していない限り(国債を発行できる限り)は機能する。また税金を投入している以上、払い損にはならない
- 老後資金のあてにして良いか→年金(だけ)に頼るのは反対。将来の支給額はこの国が経済成長するかどうか次第ということを理解しておくべき
政府の役割
そもそも政府は必要なのか。私たちに何を提供してくれているのか
- 年金制度をはじめ、医療保障制度などの社会保障を担っている
- 日本の場合、医療費は原則3割負担
- 社会保障は、社会が不安定にならないためにある→もし社会保障がない場合、親兄弟の医療費や介護費、生活費などを家族で全て負担しなければならない。また震災や事故、リストラや破産は誰にでも可能性はあり、社会保障がないと何もチャレンジできず国が回らなくなる
- このように儲からず大変な「誰もやりたがらないこと」を政府が担っている
お金に対するリテラシーを身に着けよう
- お金に苦労する人は、データを見ず、自分で考えない人
- お金に振り回される人は、考えても仕方がないことを考える人
- お金で損をする人は、与えられた情報を鵜呑みにする人
まずは一旦立ち止まり、それってホント?と考えてみることが大切。
お金の正しい使い方とは?
お金を「楽しく使う」ためには賢さが求められる。
- バブルや高度成長期は異常だった。その時代に生きた人と同じ感覚ではいけない
- お金の「正しい使い方」は人によって違う。何を楽しいと思い、何を大切にしたいかを考えて、自分が一番ハッピーになれる使い方を知ることが大切
- 著者のオススメする20代のお金の使いみち→「人・本・旅」
- 基本的に、同一商品、同一サービスは価格比較・調査を行うこと
- お金にきちんと向き合わない人は、他の大事なことにも向き合わない傾向がある
昔とは状況が違う
- 若者の○○離れとは、何かを売りたい人たちが、自分達のように消費しない若者に向けた捨てゼリフのようなもの
- 現在は様々な価値観が生まれ、「車」など、共通のステイタスシンボルが無くなった
- 日本の経済成長率の低さは、若者が消費しないからではない。人口の減少と政府の構造改革の遅れが原因
マイホーム神話に騙されるな
今の日本でマイホームを購入してトクするような状況は、まず考えられない4つの理由
- 自分の流動性が下がる → 自由に移動・転勤・起業できない
- 家族形態の変化に合わせられない → 買うなら子供の巣立ち後が賢明
- 成長性のなさ → 人口減少の中、よほどの一等地でなければ価格成長はない
- 空き家の多さと買い手の不在 → 日本の空き家は1000万戸に迫っている。売り手が増え、買い手が減ると必然的に不動産の価格は下落する
過去の日本は、マイホーム購入にローンを組めるようにして、日本中がマイホームのために働くようになり、国は成長し、土地の値段はどんどん上がっていく。結果、「土地神話」「不動産神話」が出来上がっていった。
マイホーム購入のメリットは、「老後も確実に住める家がある」ことくらい。
高度成長の裏側にあった背景
戦後の日本は様々な幸運によって、急速な発展が実現した。以下の7つが大きい。
- アメリカとソ連の冷戦構造 → ソ連に対する浮沈空母として日本が選ばれた
- 若い指導者 → 高齢者は戦争犯罪者として処罰され、若い者だけが残った
- アメリカへ追いつけ追い越せのキャッチアップ戦略 → 当時のリーダー吉田茂首相の方針
- 人口の増加 → 朝鮮や満州の日本人が帰国し、空前のベビーブームだった
- 朝鮮特需 → 戦争によりアメリカ軍からの需要で何でも売れた
- ドッジライン(緊縮財政) → 1ドル360円固定。インフレが起きずに済んだ
- 高度成長 → アメリカの基幹産業である繊維・鉄鋼・自動車を食いつぶさせてくれた
こうした恩恵を受けていたバブルおじさんが、「最近の若者はだらしがない。俺たちはあれだけ頑張って経済を成長させてきたのに」というのはお角違いである
専業主婦もこの時代に生まれた
当時の日本はやることが明確だったため、あとは長時間働くだけだった。そのため、男が仕事に専念できるよう、家のことを全てになってくれる「専業主婦」文化が生まれた
その結果以下のようなものが生まれた
- 死亡保険の流行 → 夫の死亡で露頭に迷うため
- パートタイムの生保レディ
- 「3歳児神話」 → 3歳児までは母親が抱っこしなければならない
貯蓄する意味
戦後の日本は、復興のためにお金が必要だった。そのため金融機関は貯蓄に税制の優遇を設けて、市民に貯蓄の意識を根付かせたのもこの時代
さらにマイホーム購入のための超長期ローンの設定や長寿命化、3%等の高金利も貯蓄を後押しした結果、「貯蓄が無い=悪」のような文化が根付いたと考えられる
積立型保険をオススメしない3つの理由
- レバレッジが効かない
- ゼロ金利政策のもとでは複利効果が働かない
- 付加保険料の分だけ預金よりも貯まる金額が少なくなる
過去日本で積立保険が流行った理由は、8%もの高金利であり、複利効果が働いていたから。現在のゼロ金利政策のもとでは、積立型のメリットはない
ライフステージ別のオススメ保険
- 独身 → 就労不能保険ひとつで充分
- パートナーと共働き → お互いが就労不能保険に加入
- パートナー専業主婦 → 稼ぎの多い方が死亡保障と就労不能保険の2つに加入
- 子供がいる家庭 → 教育にかかる2000万~4000万円の死亡保障に加入
なぜ投資が必要なのか?
- 投資はギャンブルと違い、ゆっくり育てていくもの。だからこそ20代から始めるべき。やり方を学べば大きく損することはない。
- お金を少しでも殖やしたければ、正しいやり方で投資を始めた方がよい
- オススメは「自分への投資」 → 生涯収入で億単位の投資効果を生む可能性があるため。特に若い時。
- 何が投資になるかは分からないが、とにかくたくさんの経験を積んでおくことが大事。
- 大小問わずあらゆる人生の可能性は、新しいことを学んだり、読んだり、足を運んだり、人と話したり、異文化に触れたりしなければ、決して生まれない
投資の対象は?
未来が予測できればそれに合わせて必要な投資をすれば良い。でも未来はだれにも分からない
- 過去の偉人達をみても、偶然の出会いや運によって何かを達成していることが多い
- 将来を予測したり損得で考えるよりも「自分の好きなこと」に投資するのが一番
投資の原則
- 無くなっても良いお金で行う
- 成長するものに投資する(自分に投資と同じく)
- 長期投資で考える → 早いうちから始め、10年20年スパンで行う
今の若者は「金の卵」である
今の若者は40代50代に比べて安泰の可能性が高い。
- 2030年ごろには訳800万人の労働者不足になる
- あらゆる仕事に空席がある
今のうちにスキルを磨いておくべし
近い将来、労働力不足に対して以下の対応がされる可能性が高い
- 女性にもっと働いてもらう
- 定年制を廃止する
- 移民を積極的に受け入れる
このような状況になった時でも職にあぶれないよう、さまざまな職に労働力が不足している今のうちに、好きなことで働いていくスキルを身につけておきましょう!